80年代末に産声を上げ、90年代半ばに入ってそのリアリティーを急速に失ったシューゲイザー。その恍惚と混沌は内向型のクラブ・ミュージックにやんわりと引き継がれ、テクノ、ハウスにその役割は継承されていくのだが、それ以降、ギター・サウンドを核にしたムーブメントはシーンに生まれていない。そしてその青い鬱屈を開放した恍惚は、ジメジメしたクラブの中にいまだ閉じ込められたままだ。
そんな中、ヨーロッパを中心に2010年頃から明らかにシューゲイザーの影響を思わせるバンドがいくつかシーンに登場し、My Bloody Valentine(マイ・ブラッディー・バレンタイン)の復活とも相まってシューゲイザー、パワー・ポップといったギター・サウンドの復権が目立つようになってきた。そんなヨーロッパ・シーンで「シューゲイザー・リバイバル」「ネオ・シューゲイザー」「ニューゲイザー」の筆頭として注目されたのがスウェーデンのFIRST LOVE, LAST RITES(ファースト・ラヴ、ラスト・ライツ)である。
2011年に『FIRST LOVE, LAST RITES』でデビューしたこのバンドは、北スウェーデンをベースに活動する4人組。デビュー・アルバムは「クリエーションへのスウェーデンからの遅れた回答」とメディアで評価され、特にSwervedriver(スワーヴドラヴァー)やRide(ライド)、Pale Saints(ペイル・セインツ)、Slowdive(スローダイヴ)、Chapterhouse(チャプターハウス)を引き合いに出して評価されることが多い。この潮流は世界的に同時発生的に起きていて、ニューヨークを拠点に活動するAsobi Seksu(アソビ・セクス)やSerena Maneesh(セリーナ・マニーシュ)、Astrobrite(アストロブライト)、Saxon Shore(サクソン・シュアー)といったバンドがニューゲイザーと評される。
FLLRの音の特徴はフィードバック・ノイズを押さえ、浮遊感のある切ないボーカル、シネマティックな雰囲気を意識的に演出しているところだろう。ロスアンゼルスの老舗インディ、Slumberlandにも通じる、青春の影を意識的に取り上げ、憂鬱で気だるい今を切り取るメランコリックなサウンドが、いっそうその切なさを強調する。彼らの代表曲とも言えるボーナストラックの「I'm Gone」のPVで表現された空気感が、まさしく彼らの表現する世界観と言えるだろう。今まさに注目のバンドである。