以前このブログで「市場」はなぜ聖域なのか、なぜ疑わないのかと書きました。今回はそれ。
モノの価値は「市場(マーケット)」が決めるのであり、それは需要と供給のバランスによって……云々、自由市場経済の基本中の基本ですね。そして巷の市場経済原理主義者たちはそれをいいことに「マーケットを信じろ、マーケットに委ねろ」と盛んに言い募ります。それが「理にかなっていて、何より公正だから」と。
嘘です。
例えば、井上員男という「洲之内コレクション」にもある版画家がいます。彼の最初の版画集『吉野川』を機会があれば手にしたいと思っていました。この版画集、昭和43年に限定600部で出た定価で5000円の希少本なんですが、先日オークションで見つけ落札。たったの1010円でした。びっくりです。はっきり言いますが、この「市場価格」は明らかに間違いです。
市場はいつもその時々の物の価値を正確に判断するというのが市場経済主義の前提なら、需要と供給にいかなる人も手を出さないというのがその絶対条件になります。「えー、まじっすか。今時、市場操作なんて広告代理店やマスメディアの本業じゃないっすか」って、みんな思うでしょ。つまり市場の操作は今時当たり前に行われているんです。だからマーケットなんて最初から疑うのが当然で、「マーケットに委ねる」なんて自殺行為以外のなにものでもない。
単行本の定価、雑誌の値段、CD/LPの店頭価格とネット通販の価格、ライヴの入場料に配信の1曲あたりの値段、DVDのレンタル料……。「この価格は真っ当か?」。この問いを最近よくします。