ある日曜日の過ごし方

10月某日(日)。世間は秋めいて、さぞ海中は賑わっているだろうと釣りの準備中、竿の穂先に致命的な不具合を見つけて一気に意気消沈。すわメーカーに問い合わせると「すでに部品の取り扱いはない」とそっけない。「それはつまるところ、この竿は直らないということですか」と半ベソかいて問いつめながら、そのうわずった己のファルセット・ヴォイスにすっかり辟易して、早々に今日の海行きをあきらめた。

この災難は家族サービスを怠ったためと自戒し、うとうとしてるママを放置して、息子を誘いバッティング・センターに繰り出すが、まだ8歳の彼に金属バットはずしりと重く、最低速80キロのマシン球にかすりもしない。目頭を赤くする彼に、120キロのマシンをバックに仁王立ちした俺。「お父ちゃんが手本ちゅうもん、見せちゃる」とはしゃぐも、4球目に腰がグシャッといった。事の次第を理解できず、相変わらず赤目でうつむく息子の傍らで「うーうー」うなる40半ばのひげ面のおっさん。文字通りの「痛い光景」。

こうなればソファーに寝そべって読書しかない。大昔の『芸術新潮』をぺらぺらしていると気になる絵がある。柳瀬正夢という昭和の初期に活動した作家の『薄暮』という作品。港から富士山を正面に捉えたものだが、この構図は沼津の西浦方面じゃないかとおっさんはぴんと来た。調べるとピンポン! 西浦にある江梨港である。今でさえ人里から遠い、忘れられたような小さな漁港だ。この画家は終戦の年、昭和20年に45歳で死んでいるから、戦前のあの港を描いているんだと知ると、もうおっさんの妄想は止まらない。痛い腰をかばってソファーで伸びをし、目を閉じてその当時の西浦を夢想すると、世界で一番幸せな気分になった……駿河湾は鏡のような凪で、立ちウキはべたっと潮に乗る。せわしない前あたりの後、さっと消し込まれるウキ。合わせる! 乗る! 首を振るこの引きはクロに違いない。慎重に、慎重に取り込め。いやぁーん、美しい銀鱗の魚体が水面に見えたじゃぁぁぁぁぁぁぁん、ばっかぁぁぁん……。

こんな風情のせわしない秋の日曜日。ちなみにニュー・ロッドはすでにゲットなう(使い方ちょっと違うか)。ヒヒ。

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