「泣かない男」の市場価値

「日本人はよく泣くようになったなあ」と76になるオヤジがぼやいたから考えた。

例えば最近の野球選手を思い出してみる。勝っては泣き、負けては泣き、がんばりますと泣き、みなさまのおかげですと泣く。野村や江夏や門田や落合は決して泣かなかったと思うが、記憶をさかのぼると現巨人監督、原の現役時代の泣きっ面に思い当たるのだ。あの頃からじゃないか、お立ち台で選手がきゃんきゃん泣くようになったのは。まぁそう思えば大いに合点がいくから、そういうことにしておこう。

そして我々一般男性。結婚式では人目もはばからず嗚咽して、出産に立ち会ってはおろおろと号泣し、保育園の入園式でうるうるときて、卒園式ですすり泣く......いつか見た風景だが、そのたびに男の涙も安くなったもんだと思いつつ、「男は泣くな」と育てられた旧人の俺には、人前で泣ける男が単純に不思議でしょうがない。まだお尻を出した方がいい。

ちなみに「涙もろい人は優しいのではなく、感情の起伏が激しい人である」という基本原則を今一度確認しておきたい。武闘派と言われる親分は決まって涙もろいと見聞するし、さんまは泣かないが紳介はすぐに泣く。

じゃあ、何でみんな泣くようになったんだろう。

まあ、うれしくても悲しくても涙は出るのものだが、涙が溢れるまで制御が不能なほど気持ちが膨らんだりしぼんだりするのは、新たな大衆病なのかね。もしかして人生先行き不安でイライラしてるから、器量が狭くなったのかしらん。いいえ違います。「泣かない男」なぞ、今時、市場価値がないからよと横のおばさんが断言する。そっか、たったそれだけの理由か......バカバカしい。

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