2006年の裏ベスト・アルバムとして評価の高いTOYのデビュー・アルバム『Toy』。年末には念願の初来日公演も実現し、レーベル・メイト、KIM HIORTH?Yと人気を二分した。TOYはふたり組のユニットだが、ひとりはSurDupermannことJorgen Traeen。 ミュージシャンとしてはもちろん、スタジオ持ちのプロデューサー&エンジニアとしても知られ、ノルウェー・シーンのキーパーソンのひとりとして知られる(JAGAJAZZISTの作品のほとんどは彼の手による)。そして彼の相棒こそ本作の主役、Alisdair Stirlingである。
ロンドン在住のロンドンっ子だが、実は彼、THE HIGHLLAMAS、STEREOLAB、Kev Hopper周辺のサークルに所属する職人気質のソングライター。彼らと同じようにモータウンやMorricone、Brian Wilson、エキゾチック、トロピカリアを憧憬する作曲家でもあるのだが、ここ8年間は自宅スタジオで自作と苦闘していた。それがひょんなことから広がりを見せる(実はTOY結成のきっかけになったのも本作だった)。それも意外な形で。
きっかけはこうだ。Alisdairの曲を気に入ったノルウェー人の友人、HPGundersenとKato Adland(The Sensible Twins)に誘われて、作りためていた自作を持ってノルウェーの彼らのスタジオを訪れたAlisdair。3人でこつこつと始めたレコーディングは、隣のビルにスタジオを構えるJorgenTraeenの耳にも入り、彼もその魅力に取り憑かれ、いつの間にかレコーディングに合流。演奏はもちろん、ミックス、マスタリングを担当することになった(この時の交友が後にTOYへと発展することになる)。
その後もAlisdairの噂はノルウェー・シーンのミュージシャンの間に広がり、それぞれが手に手に楽器を持ってスタジオに集まり始め、レコーディングに参加。結果、計20人ものミュージシャンが参加する一大プロジェクトへと発展した。名義もAlisdair Stirlingの個人名から、HOUSE OF HISSに変更。このプロジェクトのきっかけを作ったHPGundersenとKato Adland、さらにJorgen Traeenがメンバーとして明記されている。
THE HIGHLLAMASの持つ哀愁のメロディ。TOYの持つ底抜けに明るいポップさの向こうにある悲哀。その両方の魅力を集約した本作は文字どおり隠れた名盤と言って過言ではない。