\2530(with tax)
こちらはVINY版となります。CD版はこちらからご購入いただけます。
ヘルシンキの中心街から車で小一時間。見渡す限り木々で覆われ、静寂に包まれた原始の森の中に閑静な一軒家がある。家族4人で過ごすその家の一室で、あの吟遊詩人が8年の月日をかけて待望のオリジナル・アルバムを完成させた。全17曲が収録された文字通りのフル・アルバムだ。
その8年の間にテニスコーツとの共作『ヤキ・ラキ』や、そのリノベーション・アルバム『ヤキ・ラキ〜ヴァージョンズ』を発表。さらに北ヨーロッパを中心にライヴ・パフォーマンスも頻繁に行っていたパスタカス。その一方で、期待されたニュー・アルバムの制作は紆余曲折し、遅々として進まないジレンマの時期が長く続いていた。その遠因はある悲劇だった。
「それは2012年、アルバムがほとんど完成した時に起きたんだ。僕のコンピューターが何の予兆もなく突然クラッシュしてね。慌ててサルベージ業者にも相談したけど無駄だった。バックアップを取ってなかったから、すべてがパーさ。すべてを失って傷心して......もう一度同じ曲をレコーディングしたりミックスする気になれなかった」
それでも家族や友人に支えられ、時には力強く尻を叩かれて実質2年の時間をかけてようやくアルバムは完成した。サウンド的にはこれまでのパスタカスの延長線上にあり、エストニアのカントリー・ミュージックをベースにしたエレクトリック・フォークと言っていいだろう。独特の土臭い旋律と、エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーを想起させるレコーディング/ミキシング・ソフトウェアを自在に操ったツンのめるような脱臼ミックス。その絶妙な雰囲気は今回も健在だ。
アルバム・タイトルにも込められたものがある。「Pohlad(ポーラッド)とはエストニア語でリンゴンベリーのことなんだ。こっちでは自然に群生している小さな赤い実をつけるベリー。そしてエストニアのスラングでは"心配ない"って意味もある」。自身の活動を見つめ、家族を想う彼の現在の心境なのだろう。決して多くを語らないところもまた彼らしい。
そして9月には友人でもあるテニスコーツとセカイとジョイントしたジャパン・ツアー"パスタとテニスのセカイ"が企画されている(詳細は当Web参照)。パスタカス曰く「チャレンジ」でもあるこのツアーでは、またとっておきのものがクリエイトされるに違いない。こうして、パスタカスの終わらない吟遊の旅は続く。